PHILOSOPHY / OWNER'S LETTER

僕がブリーディングを仕事にする理由

保護猫を救うことと、責任あるブリーディングを行うことは、本来、対立するものではないと考えています。

01

BEGINNING

行き場を失う命を
なくすために

粗末に扱われる命、行き場を失う命は、絶対になくさなければならない。

僕は、そう思っています。

猫を家族に迎えようと考えたとき、まずは保健所や保護団体、そして野良として生きてきた猫たちに目を向けてほしい。

そこで運命の出会いを果たし、救われる命が一頭でも増えることが、何よりも望ましいことだと思っています。

02

THE WHITE CAT

白い猫との出会い

僕は仕事柄、車を運転する時間がとても長くあります。

その中で、道路上に倒れているタヌキやイタチ、そして猫の悲しい姿を何度も目にしてきました。

今から5年ほど前のことです。

その日も車を運転していると、道路脇に血を流しながら倒れている白い猫を見つけました。

その子はまだ生きていました。

痛そうに身体を動かしている姿を見た瞬間、

「まだ生きている。助けなければ」

そう思い、すぐに保護しました。

会社の玄関でできる限りの応急処置をし、その後は自宅へ連れて帰りました。

当時の僕は、今ほど猫に関する知識を持っていませんでした。

怪我が回復したら、元いた場所へ戻してあげよう。

その子にはその子なりの、外で生きてきた猫生があるのだろう。

そんなふうに考えていました。

今思えば、すぐに動物病院へ連れて行くことや、その後の生活まで考えた保護の方法など、もっと良い選択があったと思います。

けれど、そのときの僕には、目の前で苦しんでいる命を放っておくことができませんでした。

自宅で療養を続けていくうちに、その白猫は少しずつ僕に心を開き、膝の上に乗って甘えてくれるようになりました。

僕はそれまで、保護した猫には大量のノミなどが付いていることが多いため、まず身体をきれいにしてあげなければならないと思っていました。

しかし、その子は怪我をしていたため、お風呂に入れることができませんでした。

それでも、助かってくれたことがうれしくて、僕は膝の上で甘えるその子を何度も撫でていました。

しばらくすると、僕の身体のあちこちに、たむしのような皮膚症状が現れました。

調べてみると、その白猫が持っていた皮膚の感染症が、僕にも移っていたことが分かりました。

03

WHAT IT MEANS

「命を保護する」
ということ

そのとき僕は、命を保護するということは、ただ連れて帰り、ご飯を与え、かわいがることではないのだと知りました。

感染症や寄生虫の可能性を考えること。

必要に応じて、ほかの動物や家族から隔離すること。

動物病院を受診し、適切な検査や治療を受けさせること。

食事や排泄、体重、体調の変化を毎日確認すること。

人を怖がる子には、時間をかけて心を開いてもらうこと。

そして、病気になったときも、歳を取ったときも、最期の瞬間までそばにいること。

そこまで含めて初めて、「命を保護する」ということなのだと思います。

04

TO THE VERY END

最期までそばにいる

僕は幼い頃から犬と一緒に育ち、その後は保護した猫とも長い年月を過ごしてきました。

その猫は、僕にとってかけがえのない家族になりました。

けれど最期は、重い口内炎によって食べることができなくなりました。

身体はどんどん痩せ、立っていることさえ難しくなっていきました。

ふらふらになりながらも懸命に生きようとするその子を、僕は最後まで見守り、腕の中で看取ることになりました。

命と暮らすということは、楽しいことやかわいい瞬間だけではありません。

病気になれば、治療費もかかります。

介護が必要になれば、生活の時間も大きく変わります。

どれだけ尽くしても、救えないことがあります。

もっと早く気付けたのではないか。

もっと良い治療があったのではないか。

自分の選択は正しかったのか。

別れたあとも、答えの出ない問いが残ることがあります。

それでも、その子の生涯を引き受け、最期までそばにいる。

それが、家族として命を迎えるということだと思っています。

05

BEYOND KINDNESS

優しさだけでは足りない

保健所や野良猫から迎える場合、子猫を購入するような費用がかからないこともあります。

しかし、命に値札が付いていないことと、その命を守るためにお金がかからないことは、まったく別の話です。

保護した猫には、すでに病気や怪我があるかもしれません。

人との暮らしに慣れていないかもしれません。

感染症や寄生虫を持っている可能性もあります。

どのような環境で生まれ、何を食べ、どのように育ってきたのか分からないこともあります。

そのすべてを受け止めるには、優しさだけでは足りません。

正しい知識。

毎日の世話にかける時間。

治療や検査にかかる費用。

生活環境を整える労力。

家族や先住動物への配慮。

そして、何があっても途中で投げ出さない覚悟が必要です。

だからといって、保護猫を迎えることを難しいものとして遠ざけたいわけではありません。

むしろ、命を迎える現実を正しく知ったうえで覚悟を持って迎えることが、その子を本当の意味で救うことにつながると考えています。

僕自身、最初からすべてを知っていたわけではありません。

間違えたこともあります。

知識が足りず、あとになって後悔したこともあります。

そのたびに調べ、学び、経験を積んできました。

命を預かる世界には、「知らなかった」では済まされないことがあります。

だからこそ、これからも学ぶことをやめてはいけないと思っています。

06

TWO RESPONSIBILITIES

保護と、責任ある
ブリーディング

そして、僕がブリーダーを仕事にすることは、保護猫という選択肢に背を向けることではありません。

保護猫を救うことと、責任あるブリーディングを行うことは、本来、対立するものではないと考えています。

保護されなければ生きられない命を増やさないためにも、命を誕生させる側が、これまで以上に大きな責任を持たなければなりません。

07

RESPONSIBLE BREEDING

そこまでが、
ブリーディング

僕が考えるブリーダーの仕事は、ただ猫を交配させ、子猫を産ませ、販売することではありません。

親猫の健康状態や性格を理解すること。

遺伝性疾患に関する検査を行うこと。

血統や相性を考え、無理のない繁殖計画を立てること。

親猫の身体に過度な負担をかけないこと。

妊娠中の母猫を管理し、安全な出産を支えること。

生まれた子猫の小さな変化を見逃さず、必要な医療につなげること。

衛生的で安心できる環境を整え、適切な食事と健康管理を続けること。

人やほかの猫との関わりを通じて、家庭で暮らしていくための経験を丁寧に積ませること。

そして、一頭一頭の性格や特徴を見極め、その子を心から大切にしてくれる家族へとつなぐこと。

そこまでが、ブリーディングです。

猫型の窓のそばでこちらを見るラグドールの仔猫
Amor Alice

僕は、誰にでも子猫を渡せばよいとは思っていません。

かわいいという気持ちは、命を迎える大切なきっかけです。

しかし、かわいいという気持ちだけで、その子の一生を支えることはできません。

病気になったとき。

歳を取ったとき。

仕事や家庭環境が変わったとき。

思っていた性格と違ったとき。

鳴き声や抜け毛、排泄、爪とぎなど、暮らしの中で困ることが出てきたとき。

それでも、その子を家族として守り続けられるのか。

お迎えを考えている方には、その責任まで理解したうえで決断してほしいと思っています。

08

AFTER HOMECOMING

送り出した日から
始まる責任

そして、子猫を新しい家族へ送り出した日が、ブリーダーとしての責任の終わりではありません。

むしろ、そこから新しい責任が始まります。

食事や体調、生活環境について相談を受けること。

病気や問題が起きたときには、一緒に考えること。

初めて猫と暮らす方の不安に寄り添うこと。

万が一、どうしても一緒に暮らし続けることができなくなったときには、その命が行き場を失わないように手を差し伸べること。

自分がこの世に送り出した命を、保健所や路上へ戻る命にしないこと。

僕は、それがブリーダーとして背負うべき責任だと考えています。

子猫を迎えていただく際に受け取るお金も、命そのものの値段ではありません。

親猫や子猫の健康を守るための検査や医療。

良質な食事。

安全で衛生的な飼育環境。

出産や子育てを支えるための設備。

毎日の健康管理。

社会化のためにかける時間。

そして、お迎え後も相談を受け、支え続けるために必要なものです。

お金をいただく仕事だからこそ、かわいい子猫を渡すだけでは許されません。

その命の誕生に関わった者として、できる限りの知識と環境を用意し、新しいご家族が安心して一緒に暮らしていけるところまで支える責任があります。

09

MY ANSWER

命と家族の幸せを、
丁寧につなぐ

僕にとってブリーディングとは、命を商品として生み出す仕事ではありません。

かけがえのない命と、その命を心から愛してくれる家族の幸せを、丁寧につなぐ仕事です。

一頭一頭が、誰かにとってかけがえのない家族になること。

病気になっても、歳を取っても、変わらず愛されること。

そして、最期の瞬間まで安心できる場所で、その生涯をまっとうすること。

その未来まで考え、責任を持って命をつなぐ。

それが、僕の考えるブリーダーです。

そして、それが、僕がブリーディングを仕事にする理由です。